「Applewatch(アップルウォッチ)」の全世界での売り上げが、ついに高級腕時計界の王様である「ROLEX(ロレックス)」を抜いたというニュースが流れていました。
腕時計界で不動の一位だったロレックスを、アップルウォッチが上回る未来というのは予想していたような、しかし叶ってほしくなかったような複雑な心境の方も多いのではないでしょうか。
このニュースを踏まえて、今後のアップルウォッチなどをはじめとするスマートウォッチ業界、そして高級腕時計業界の今後を考察していきたいと思います。
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アップルウォッチが売上高6,600億円超で腕時計のシェア第一位
先日行われたApple社の新モデル発表会で、CEOのティム・クック氏自らの口から「アップルウォッチが世界腕時計のシェアで第一位となった」と発表されました。
ニュースのソースによるとアップルウォッチの売上は昨年度6,600億円超とのこと。
あくまで販売層や価格層は違うものの、世界中の腕時計メーカーを抜き去り、腕時計の世界でもアップルが一位となったという事実は時代を感じさせる出来事です。
スマートウォッチの勢い
アップルウォッチが先駆けとなったスマートウォッチ事業は、今や多くの企業が手掛けています。
いまだにアップルウォッチの対抗馬となるような時計は開発されていないものの、国内腕時計メーカーや「Louis Vuitton(ルイヴィトン)」など高級ブランド業界までも巻き込んだ一大市場となりつつあります。
スマートウォッチが発売されて以来、アップルウォッチをはじめとするスマートウォッチ市場の拡大は、スイスの高級時計業界に大きな打撃を与えると予想する経済アナリストも多くいましたが、数字に表れたことでもはや現実として受け止めなくてはなりません。
ロレックスの売上高が減っているわけではない
ただしアップルウォッチによってロレックスが直接的に打撃を受けているとは考えられません。
ロレックスの売上高はあまり公表されていませんが、およそ「50億フラン(日本円で5,500億円程度)」といわれています。
高級ブランドが近年低迷しているといわれながらも、腕時計のナンバーワンであるロレックスはここ数年間も売上が伸び続けていると予想されています。
そしてこれはあくまでロレックス社での売上ですので、中古市場でも人気の高いロレックスの市場規模はもっと大きいとも言えます。
中古の売上高も含めればまだロレックスが一位か!?
公平な見方でないことは前置きしておかなくてはならないものの、ロレックスは中古市場でも非常に人気が高いです。
少なくとも日本国内にだけ目を向けると、少なく見積もってもロレックス全体の20%程度は中古の品が買われているはず。
中古はあくまで新品が買われて初めて生まれるものなので、これだけで売上が勝っているとまでは言えませんが、アップルウォッチと違って中古の需要が非常に高いという側面があることは確かです。
変わりゆく高級時計業界の情勢
高級時計全体でみると決して業績が良いとは言えません。
中国人の特需が落ち着いてからは腕時計のみならず、数多くの高級ブランドが苦戦を強いられていることは周知の事実です。
そもそも腕時計業界上位の売上高はどうなっているかというと、公表していないところもあり目安程度ですが以下のようになっています。
海外メーカー売上高
- ロレックス 5,500億円
- カルティエ 2,000億円
- オメガ 2,000億円
- パテック・フィリップ 1,000億
- タグ・ホイヤー 800億
国内メーカー売上高
- セイコー 1,600億円
- カシオ 1,800億円
- シチズン 1,700億円
数字だけを見るとロレックスが圧倒的にナンバーワンであることがわかります。実際にこの中で数字がもっとも安定しています。
それに次ぐカルティエやオメガといったところは近年伸び悩んでいる傾向もありますし、ロレックスを追う立場のブランドの動向は今後注目となります。
高級ブランドのグループ別でみるとまた少し傾向は異なります。
- 第一位 スウォッチグループ(オメガ・ブレゲ・ハリーウィンストン他)
- 第二位 リシュモングループ(カルティエ・IWC・パネライ他)
- 第三位 ロレックス
- 第四位 LVMHグループ(タグ・ホイヤー・ウブロ・ルイヴィトン他)
この中でもLVMHグループは今年スマートウォッチ事業に本格参戦することを発表していますし、老舗の高級時計メーカーを多数そろえる「スウォッチグループ」「リシュモングループ」をどこまで脅かせるのかということが注目されます。
アップルウォッチの脅威と購入層に対する意見
想像は容易いですが、高級時計の売上推移と比較してもアップルウォッチの推移はすさまじいものです。
2015年に発売され“発売からたった二年ですべての腕時計ブランドを抜かしてしまった”といえばそれだけで脅威なことは言うまでもありません。
だがしかし今回ニュースなどを拝見してて意見としては多かったのは以下のようなものです。
“そもそもロレックスを買う層とアップルウォッチを買う層は別”
“ロレックス持ってる人はアップルウォッチも持っていそうだけど、アップルウォッチ買う人はロレックス買えないのでは?”
要はアップルウォッチがどんなに成功しようと、ロレックスの売り上げには影響しないということが言いたいのだと思います。
確実に腕時計に対する人々の需要は変わっている
上記のような意見を見てまず思ったことは「絶対に少なからず影響は出てきている」ということです。
たしかにアップルウォッチを購入したい人と、ロレックスを購入したい人の層が異なることは理解できます。
単純に値段を比較しても「5万円程度」の品と「最低でも60万円以上」する品ですから、買えない人の比率が圧倒的に異なります。
ステータス性という意味でも、ロレックスには多かれ少なかれお金持ちがしている高級時計のイメージがありますが、アップルウォッチはあくまで最先端ガジェットといった位置づけで、時計としての価値は全く異なります。
しかし世の中は日々便利になってきて「人々がより利便性に富んだものを求める」傾向は確実に高まっています。
- 携帯電話の登場で時間を確認するためだけの腕時計を着用しない人が増えた
- 時間を確認すること以外にも様々な機能を備えたアップルウォッチがヒットした
このように時間を見るために存在していた機械式の腕時計は、確実に絶対数を奪われつつあるのです。
もちろんこの先スマートウォッチが飽きられて、より嗜好性の高い高級時計が生き残っていくのか、はたまたロレックスがスマートウォッチ事業に着手して生き残っていくのかはわかりません。
しかし人々が腕時計に対して求めるものが、アップルウォッチのヒットを見る限り変わっていっていることは確かであると思います。
実際に私自身ロレックスを愛用している一人ですが、情報収集中に下記の素晴らしい記事を見つけたので最後にご紹介させていただきます。
こうしてロレックスなどの高級時計から、スマートウォッチへ乗り換えていく人が増えていくのは必然だと思うのです。
今のところ逆はあまり想像できませんが。
このニュースを見て高級腕時計メーカーが焦らず楽観視しているようでは、高級時計業界の縮小は加速していくことと予想します。
高級時計が時代遅れではないが、
高級時計のビジネスモデルは時代遅れ。
それ故、たった2年で抜かれる。
スマートウォッチは同じ物を長く使うわけでは無いから、売上高で抜かれるのは仕方ないと思う。使い捨て機器の増加で、ますます資源を無駄にする感じ。