ブランドリユース事業を展開する業界最大手の「コメ兵」が満を持してCtoC向けフリマアプリをリリースしました。
実はこのアプリのリリースはかなり前から噂されていたもので(以前の「メルカリメゾンズの記事」でも少し触れています。)、同業として期待していた身としては“やっとリリースされたか!”という印象です。
コメ兵をはじめとする中古ブランド業界はメルカリなどフリマアプリのサービスの台頭で、業績面にも影響が出ていることは周知の事実です。
今回は中古ブランド業界の最大手が放つ「メルカリへの対抗策(いやむしろ同じ道を行く覚悟か・・・)」を考察していきたいと思います。
リリースされたアプリを見た感想としては“正直流行らないような・・・”というのが率直な印象です。
それらの理由や主なサービス概要も解説していきます。
このページの目次
ブランド買取最大手が始めたフリマアプリ「KANTE」
コメ兵といえば中古ブランドリユース業者の中でも最大手の売上規模を誇る会社です。それに次ぐなんぼや、そして大黒屋・・・というのが今の中古ブランド業界の情勢です。
今回はそんな最大手で創業70周年と歴史も深い「コメ兵」がフリマアプリのサービスをスタートさせるとなり多方面のメディアでも話題となっていました。(※Yahoo!ニュースのトップにも記事が掲載されていました)
フリマアプリとしての基本的な機能についてはメルカリなどをはじめとする他社サービスと特に変わりはありません。
(写真:アプリを開くと出品されているブランド品がずらっと並びます)
ただ「出品できる金額が1万円以上」と設定されているため、安価な品物は売ることはできず、完全にブランド品専門のマーケットプレイスとなっています。
気になる出品にかかわる利用料としては「販売手数料」と「送料(出品者完全自己負担)」の二つがかかります。
販売手数料については以下のように定められていて、一律10%のメルカリよりも少し高い金額が設定されています。
- KANTEの販売手数料
10,000円-49,999円-手数料15%
50,000円-99,999円-手数料12%
100,000円-手数料10%
※現在はリリース直後のため、上から10%、9%、8.5%という期間限定のサービス手数料が定められています
ここまでだと、ただのブランド専門のフリマアプリですが、KANTEには買取業者コメ兵ならではの二つの機能があります。
プロの真贋判定「KOMEHYOカンテイ」が利用可
購入者には、コメ兵の査定員による真贋判定サービス「KOMEHYOカンテイ」を利用する権利が与えられています。
これを行使すると、出品者はひとまずKANTE事務局に品物を送らなくてはなりません。
そこでコメ兵の鑑定士が品物の真贋判定をしたのち、購入者の手元に届くという流れです。
鑑定サービスの利用は任意でおこなえますが、鑑定料は品物の代金(出品者の販売手数料ともいえる)に含まれているため無料で利用ができます。
もし利用しないという場合には「鑑定手数料2%程度(品物によって変動)が代金から割引になる」というシステムを採用しています。
従来のフリマアプリでは偽ブランド品の販売が問題視されていますが、コメ兵自ら第三者として品物を鑑定することで偽ブランド品を防止することが狙いです。
一定期間売れなかった品物はコメ兵で買取可
KANTEで出品したブランド品が一か月程度売れなかった場合には、保証としてコメ兵が買取してくれるという機能があります。
ブランド品などある程度高額な品物は、フリマアプリやオークションなどでは売れづらいとされています。
そういったときでも最後はコメ兵が買取してくれるという機能があり、フリマアプリ業界では初の試みかと思います。
コメ兵は買取業がメインですので、KANTEで売れなかった場合でも手軽に換金することが可能です。
正直期待外れだった点について
ここまでKANTEのフリマアプリとしての機能面や目新しい部分を解説していきましたが、実際にこれを見て“さすがに流行らないのでは・・・”と思ったのが率直な感想です。
そういった理由について考えをまとめてみました。
真贋判定はAIもしくはせめて写真判定にしてほしかった
“コメ兵のフリマアプリには真贋判定が実装される・・・!”という噂は業界内でも話題の一つに挙がっていました。
しかし実装された機能は「コメ兵に品物を送り鑑定する」というありきたりなものでした。
いや、同じようにブランド品を鑑定している身からすれば、実物を見ずに真贋判定を下すのは非常に困難であることは百も承知です。
ですがフリマアプリという出品と購入の手軽さをウリにして流行ったサービスにおいては「偽ブランド品鑑定AIの導入※」、さすがにAIはまだ早いということであれば、せめて写真判定くらい手軽なものを実装してほしかったというのが、期待を込めた意味でも素直な感想です。
(※こちらも過去記事「偽ブランド品をAIで見分けられる時代が来る!?」で紹介しているのでチェックしてみてください)
写真でのブランド品査定アプリなどは他社買取業者でもおこなっていますし、品物を送り以外のもう少し手軽なものにしてほしかったです。
それでは完全な真贋判定を下すことができないというのも理解できますけど・・・
手軽さでメルカリと同等でなければ利用者は増えない
フリマアプリに出品する層を考えると、やはり「手軽さ」がもっとも重要になると個人的には思っています。
もちろんその中には「入金の速さ」「品物が届く速さ」なども含まれます。
中古のブランド品を取り扱う上で真贋が一番難しい問題なのはわかりますが、フリマアプリのメリットである手軽さを犠牲にしたサービスではそこまで爆発的な利用者の増加は見込めないのではないかと感じました。
今年話題になった買取アプリ「CASH」がサービスが停止になるほど爆発的にヒットしたのも、ブランド品を扱いながらも手軽さに特化した結果だと思います。
しっかり偽物じゃないことをプロがチェックしてくれる点は、フリマアプリの弱点を克服することではありますが、それゆえに時間もかかり、ましては実質的な手数料も高いとあってはそこまで流行らないのでは・・・?という感想です。
フリマアプリと中古ブランド品市場の今後
フリマアプリによってコメ兵などをはじめとする中古ブランド品市場は打撃を受けました。
しかし現場にいる身としては、やはりそれは低価格な品物に限るという印象です。
まだまだ高額なブランド品をフリマアプリやオークションで購入するというのは抵抗がある方が多いでしょうし、今回リリースされたKANTEがそこを打開できればまた少し市場も変わってくると思います。
実際にKANTEでは100万円を越えるような高級時計なども多数出品されていましたし、売れるのかどうかは気になるところです。
ただ低価格なブランド品がフリマアプリなどに流れることで、買取業者はさらなる隙間産業になりつつあることは事実です。
ひとまず、その中で打開策を講じたコメ兵のフリマアプリサービスには注目していきたいと思います。