ここ数日リユース大手「BOOKOFF(ブックオフ)」を中心に周囲が取り沙汰されていますが、ブランド品買取業界も同様に「フリマアプリのシェアの拡大」と「為替の影響などによる中国人観光客の減少」というダブルパンチによって苦境に立たされている現状です。
個人的にも買取業界に努める立場にあるため、真面目にうちの会社数年後あるかな・・・たぶんないな・・・(笑)なんて考えるほどに危機感をおぼえます。
とまあ自身の会社のことは置いておきまして、業界全体で今どういう動きがあるのか?今後どうしたら買取業界が上を向いていけるかなどを、業界を内部から見た上でできるだけ公平な目線にて考察してみました。
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そもそもブランド品買取業界は落ちているの?
一言でいうと全体的にかなり落ちてきています。
多くの業者が2.3年前の中国人の爆買いブームでピークを迎えて、爆買いが下火になり、さらにフリマアプリによって低価格帯のブランド品の売り上げをかなり奪われているはずです。
とは全部が全部落ちているというわけでなく、いくつか調子が良い業者もあることはあります。
個人的に感じる今売り上げが良い中古ブランド品業者の傾向としてはいずれかの二つで
- 高く買い取りして主に観光客向けに安く売る薄利多売のところ
- 独自に海外などへの卸しルートを確立して他所より高く買取できるところ
伸びているな~と感じる業者はこのいずれかの戦略を取っているところが多いです。
共通して言えることは販売先(卸先)が「外国人観光客」もしくは「海外の顧客」という点です。
とはいえこれは業者間での少ないパイの取り合いにおいてリードしているにすぎず、はっきりいって根本的なフリマアプリなどへの対抗策としては成り立っていません。
高級路線にシフトしていくという選択肢
ブックオフもニュースが出ていましたが、高級路線にシフトするという戦略を取っている業者も少なくありません。
たしかにメルカリでは高額品の流通量はまだまだ多くありません。価格にして10万円以下の商品は多く取引されていますが、それ以上の額の高級バッグなどは買う側としても信頼性などから手が出しづらいという状況があります。
そのため今後は高級路線に絞って販売をおこない利益を確保するというのが戦略の中身ですが、これ自体もメルカリへの対抗の諦めにしかなっていないと感じます。
そもそも高級路線でさえフリマアプリなどCtoCサービスの信頼性が低いという理由だけで、シェアが保てているだけで、いずれにせよ多くの業者がひしめき合う戦場であることには変わりません。
諦めて場所を移すのも良いですが、ブックオフの場合まずはメインの本をもう少し高く買取できるような体制作りに注力するほうが良いのでは?と感じました。
買取業者のメリットとは何?
利用者側から見ると「手間のかからなさ・一度に多くのものを売れる」と「即金が手に入る」ことくらいで、損得の部分においては現状圧倒的にフリマアプリに劣ると思います。
高く売りたい人がフリマアプリに流れていくのは仕方ありませんし、それはヤフオクが全盛のときから変わりません。
ですが肝心の手間や即金が手に入るといった唯一のメリットでさえ、フリマアプリの利便性や利用者・購入者の多さでカバーしてきているということが問題です。
今後ブランド品を売りたい人がすべてフリマアプリに流れるとまではならないと思いますが、利用者の割合はフリマアプリにどんどん傾いていくであろうことは容易に想像がつきます。
どうすればCtoCサービスに太刀打ちできるのか?
この問題が一番のテーマであり、多くの業者が頭を悩ませるところです。
まず現状の買取業者のサービスとフリマアプリなどCtoCのサービスの流れを比較してみます。
【買取業者を利用したとき】
買取価格:20,000円 ⇒販売価格:40,000円
だいたい仕入れは販売価格の50%くらいでおこなわれる場合が多いので、売り手には20,000円が入り、業者の利幅は20,000円となりそこから人経費やらなんやらが引かれた額が実利として業者の手元に残ります。
【フリマアプリを利用したとき】
出品価格:30,000円 ⇒購入価格:30,000円 別途出品者に販売手数料が10%
出品者と購入者で取引がおこなわれるためお金の流れが単純です。メルカリなどは手数料として10%が引かれるため、売り手には27,000円が手元に入ります。
商品によって買取価格の仕入れ額の割合は上下するので一概には言えませんが、ブランド品の場合は売る側としては買取に出すと20,000円になるものが、フリマアプリで売れば27,000円で売れるため「7,000円の得」になりますし、買う側も店頭よりも安く買うことができ、フリマアプリには売り手と買い手双方にメリットがあります。
この時点でもう勝ち目はないな・・・というのが正直なところですが(笑)もう少し掘り下げてみます。
はっきり言って買取金額を上げるしか勝ち目はない
正直フリマアプリの販売価格に勝つのは無理だと思います。何故無理かというと、安く売るためにはより安く買取しなくてはならないからです。これをしてしまうとフリマアプリで売られるものがより増えてしまうはず。
買取業者にとってCtoCサービスの何が脅威かというと、商品の仕入れがよりしづらくなるという点です。となるとそれに勝つためには買取価格を上げるしか方法はありません。
そして買取価格を上げるためには「販売価格を上げる」もしくは「利益分を削減する」というどちらかの二択が必要となります。
販売価格を上げるためには
販売価格を上げるために国外に目を向ける必要があります。現状すでに多くの業者が目を向けてはいますが、実際に同じブランド品でも日本より香港や中国の相場のほうが高い事例も多いです。
実際にヤフオクなどの国内オークション以外にも「eBay」などを利用して相場より高く売ることは可能です。国内での小売りを削減し、より海外への卸し先を増やすことで全体的な販売価格を上げることは可能です。
利益を削減することは可能か?
業界全体として今後は利益を削ってでも仕入れを確保していく流れは加速していくと思います。
はっきり言って買取業界の値付けはグレーな印象も多いと思いますし、事実グレーな部分は多々あります。
品によっては健全じゃない利益の乗せ方することも多く、だからこそメルカリでの販売価格に容易に出し抜かれたのだと思います。
買取業者は買い取った品物を消費者に売るというのが基本ですが、実際にはBtoBやBtoBtoCのような取引をしている業者も多いです。
まずはBtoBの取引をなくすだけでも、その分買取額に還元できるはずです。
販売委託として買取すればメルカリ並みの買取額も可能
買取金額を上げる方法として一つ挙げたいのが「販売委託」という形で買取するという方法です。(正確には買取ではないが)
従来の買取では「そもそも売れるかどうかわからない・販売コストがいくらかかるのかわからない」という状態で業者が買取するため、ある程度売りさばけないリスクも考慮した金額提示になります。
基本的に売れなかった場合は業者間の取引(BtoB)になり、市場価格を下回る額で卸されるため、その金額でラインが引かれています。
しかし販売委託という形であれば売れて初めて金銭の取引が成立しますので、買取業者としてはリスクがありません。
そのため普通に買取するよりは多くの金額を売り手にバックすることができます。
【買取の場合】
売れないリスクなどがある ⇒BtoB取引相場を元に査定額を算出
【販売委託の場合】
店頭やECで売れて初めて成立 ⇒市場相場を元に査定額を算出
大手の業者であれば販売力もありますし、これならば売り手に関しては、ほぼメルカリと同額を手にすることは可能だと思います。
ただしメルカリと同じ価格で買うことはできない
販売委託であれば売り手に対してメルカリと同価格を提示することは可能だと思いますが、実店舗を構えて販売する販売委託では管理コストの分メルカリと同じ額で売ることは不可能です。
そのため買う側にはメリットをもたらすことはできません。
今後は同じようなCtoCサービスを展開するという戦略も!?
あと考えられるのは買取業者が仲介するCtoCサービスを展開することです。
今のフリマアプリではブランド品における信用は確立されていません。この点は単純なCtoCサービスでは信用が裏付けられることは今後もないと思います。
そこで専門知識のある買取業者が仲介して一度鑑定することで、フリマアプリでは扱いづらい高額な品物を安心して取引することができます。
手数料や手間賃の問題はもちろんありますが、高級ブランド専門のフリマアプリやCtoCサービスは今後の戦略として考えられます。
買取業者はどう改革すべきか?
この問いに対して明確な答えを示すことはとても難しいです。簡単にできたら買取業者も苦労していないですし・・・
とはいえ内部から見ても改善すべき点はたくさんあると思います。よく言われる接客の質などに関しても業者ごとで差が大きいです。
「コメ兵」など大手の業者はしっかり社員教育されていて、デパートのような丁寧な接客をしてくれるにも関わらず、少し外れた小さな業者になると態度の悪い査定員や店員がたくさんいます。
最低限グレーなイメージは払拭する努力を
勤めていてなんですが、そもそも買取業者ってグレーな存在だと思っています。利用者からしたら「何故その査定金額なのか?」という点が不透明だからです。
どうせ業者は安く買われるんだから・・・というイメージが先行していることもフリマアプリを勢いづけている要因です。
「うちではこの金額が限界です・・・」なんていうのであれば、なぜその金額なのか内訳を開示できるくらいになってくれたらなと個人的には思います。難しいのも当然わかってはいますが。
フリマアプリが大きくなった要因には、若い女性を中心とした客層を取り込むことができたからといわれています。おそらく中には買取業者に縁がなかった人たちも多いはずです。
買取業界全体を上向かせるという意味ではもう少しイメージアップやサービスの質の向上をした上で、現状の査定基準などを見直しフリマアプリに対抗していかないと行く末は厳しいです。
今までフリマアプリがなかった時代、買取業者は消去法で選ばれていたにすぎません。
どんな業種でも同じことが言えますが、サービスに付加価値を与えることができないブランド買取業者はフリマアプリによってますます淘汰されていくことでしょう。