貴金属やジュエリーをお金に換える質屋

利用したことがある方も利用したことがない方も「質屋」という存在はご存知かと思います。

質屋のシステムを簡単に説明すると「貴金属やブランド品などを担保にお金を借り入れすること」「一定期間内に借り入れ額(+利息)を返済すれば担保が返ってくる」ということです。

自身の信用を元に借り入れをすることができる貸金業とは異なり、借り入れするためには信用の代わりに担保となる物が必要となります。業態は貸金業と似ているものの、質屋は質屋営業法という全く別の法に基づく業務形態です。

前置きは以上として、今回の本題は「質屋を使うことのメリットがあるのか?」という点。

質屋は運営する側から見ると必ず儲けることができる仕組みですが、実際に利用者としてのメリットは一つないのでは?と思うのです。

質屋と貸金を比較したとき

貸金といっても様々で「キャッシング・消費者金融」最近では「銀行カードローン」なんかも盛んです。これらで借り入れするのに対して、質屋で借り入れすることの大きなメリットは以下の二つです。

  • 担保になる物さえあれば本人の審査は必要ない
  • 信用情報に借り入れ記録が残らない

審査は一切なしで即日で借りれる


当たり前といえば当たり前の話ですが、質屋の場合審査の対象になるのは担保となる物です。本人の職種や年収なんかは一切関係ありません。

貸金の場合は本人の審査が大前提としてありますが、質屋で借り入れする場合には必要ありません。

信用情報やブラックリストなども無関係


質屋での借り入れは信用情報として記録されることはありません。極端に言えば過去に借金の返済などが遅れたりブラックリストに載ってしまっているような人でも借り入れることができます。

それに質屋で借り入れしたお金を仮に返済しなくとも、担保となるものの所有権が質屋に移るだけで信用情報とは無関係です。

 

 

とメリットはないのでは?と問題提起しておきながら、貸金業と比較したときの質屋のメリットをまとめてみましたが、貸金でお金を借りるくらいなら質屋を利用しろと言いたいのではありません。

今回私が言いたいのは質屋を利用するくらいなら「質入れ(物を担保に借り入れすること)」せずに「買取」したほうがまだ良いということです。

質屋で借り入れするくらいなら買取してもらったほうがマシ

質屋として営業しているほぼすべてのお店で「質入れ」と「買取」という二つの方法を選ぶことができます。

質入れはあくまで担保として品物を預けているというニュアンスで、期間内に借り入れ額+利息分を返済すれば品物は戻ってきます。

買取は完全に物を売ってしまうため、今後品物を取り返すことは一切できません。しかしその分買取なら質入れより高い金額で売ることができます。

金額の差額はだいたいこれくらいです。


(参照:質入れについて|大黒屋公式サイト)

ロレックスの場合かなり高額ですが、もう少し安いルイヴィトンのバッグなんかでも率はこれくらい変わります。質入れのほうが買取よりも20-30%くらい安いです。

質入れでちゃんと返済する人はほぼいない

「そもそも質入れと買取なら利用者層が違うだろう」と想像する方もいらっしゃると思いますが、実際はそこまで変わらないと私は考えています。

質入れして期間内に返済できず、担保した品物の所有権が質屋に移ることを業界用語で「質流れ」といいますが、この質流れする品物は全体で50%くらいに及びます。

この50%という数字は私が働いている地域での数字のため、もっと客層が悪いような地域になれば質流れの率はもっと多いのではないかと思います。

ある大手の質屋業者のキャッチコピーに“借りたお金を返さなくてもいい?なぜなら質屋だから”というコピーがあります。

要は質屋を利用する人の半分以上は「お金を借りる」という感覚ではなく「品物を換金しに来ている」のです。

質屋の利息は法外レベルでバカ高い

ちなみにですが質入れの利息(専門用語では質料といいます)がいくらだかご存知でしょうか?

実際に質屋で適用されている質料は大手なら「4%-6%」くらいのところが多いですが、町の質屋なんかだと「6%-8%」くらいが相場となっています。(※30万以下の借り入れの場合)

質屋営業法で定められた質料の上限は月9%までが認められています。

仮に上限の9%を質料として定める質屋があったとすると、年利に換算すると金利は108%となる計算です。

「質屋で10万円借り入れ・質料9%の場合」

借り入れから30日以内
元金10万円+質料9,000円(質料×ひと月分)⇒109,000円で担保の返還

借り入れから31日~60日
元金10万円+質料18,000円(質料×ふた月分)⇒118,000円で担保の返還

借り入れから1年後
元金10万円+質料108,000円(質料×12か月分)⇒208,000円で担保の返還

(※実際には最初に設定される質流れ期間は3か月程度で、質料のみの支払いをすれば期間を延長することができるシステム)

この場合一年経つだけで利息分が元金を上回ります。質屋の金利は「リボ払い」や「消費者金融」なんかでも比にならないほど圧倒的な高金利なのです。

そのため質屋は絶対に儲かる

質屋のシステムは運営する側は必ず儲かります。まず質入れされた時点で

  • 質料が手元に残る
  • 品物が手元に残る

このどちらかが確約されます。貸金なんかよりもよっぽど高金利である質料が入る、もしくは買取よりもさらに安く商品を仕入れることができるという二択しかないのです。

それゆえに質屋のシステムは確実に儲けることができますが、当然ユーザーにとってはどちらにせよ利点はありません。

まとめ

とにかく質屋でお金を借りるくらいなら売ってしまったほうがマシです。

質屋を利用したいという方の多くが「あとで借り入れ分を返済して品物を取り返そう」と考えているはずですが、実際に取り返す例はかなり少なく高額な質料にも阻まれます。

担保となる品物さえあれば審査もいらずその場でお金を借り入れるというのが質屋のメリットでありますが、システムとしてはかなり殿様商売だなというのが個人的な意見です。

質屋は近年倒産する例も多く、年々かなりのペースで数を減らしてきているといわれてはいますが、実態を知れば知るほど利用価値がほぼないのは明らかです。

その場で現金が必要なのであればせめて質入れせず買取したほうがマシだというものです。

そもそも本当に大事な品物をあなたは質入れしますでしょうか?

そう考えると質屋を利用する理由はそもそもないのではないでしょうか。