革のケースを付けたリコーフレックス

先日祖父の遺品の整理を手伝っていたところ、昔のフィルムカメラをいくつか発見。

私自身、カメラを趣味にしていることもあったり、こうしたサイトを運営していることもあり、欲しいと懇願(?)すると、あっけなく祖母より“もっていってもっていって!要らないなら捨てるか売るかしてちょうだい。”と。

普段はデジタル一眼レフやデジカメなどを愛用しているため、昔のフィルムカメラに触るのは初めて。

そこで一番気になった「二眼レフカメラ」を、まったくもって素人な私が修理してみて、撮影までしてとても楽しむことができたため、今回はそんなことを記事にしていきたいと思います。

遺品にあった昔のカメラたち

祖父の遺品のフィルムカメラたち
写真:祖父の遺品として残っていたカメラたち

遺品として残っていたカメラは写真の通り4つです。

内容としては

  • Canon FX(キャノンの一眼レフカメラ)
  • RICOHFLEX(リコーの二眼レフ)
  • FLASH FUJICA(聞いたことない・・・)
  • なんちゃら(形も使い方もまったくもって不明・・・)

キャノンのカメラは今でもジャンク品コーナーとかに置いてありそうな品、二眼レフは見たことあるけど触ったことはない。

他の2点に関してはまったく知らない品で、価値があるのかもまったくわかりません。

基本的にどれもなにかしらの問題を抱えていそうで、ファインダーをのぞくと大きな濁りがあったり、保存状態も段ボールの中に放置。という感じでした。

祖父の遺品のカメラたち
写真:古いカメラのメカ感とジャンク感

特に奥のカメラなんて形からしておかしいです。

右の品はカメラレンズで、なぜかこれだけニコンのものでした・・・(ニコンの本体は見当たらず)

ちょうど私も普段ニコンのデジタル一眼レフを愛用しているため、そのまま使えたのでラッキーという感じです。

古いnikonのレンズで撮影したリコーフレックス
写真:そのまま使えた古いニコンのレンズで撮影したリコーフレックス

おそらくほかのカメラと同様で非常に古いレンズですが、上の写真のように写りは全く劣化していませんでした。

単焦点で120mmF2.8という扱いづらいスペックなので、高価な品ではないと思いますが、せっかくなんで使ってあげたいなと思います。

とりあえず、本体の中では二眼レフカメラである「リコーフレックス」が個人的な興味を引きました。

今回修理してみることにしたリコーフレックス

リコーフレックスを直す
写真:一度撮影してみたい二眼レフカメラ)

今回は4つの中から「リコーフレックス」をなんとか撮影できる状態にしてみたいなという願望から始まりました。

このカメラのことを調べてみると、リコーの公式サイトに普通に載っていました。(こんな古い商品情報が載っているとかすごい・・・)

リコーフレックスⅥ|RICOH製品情報

それによると、
発売年月:1952年
当時定価:8,300円(ケース付き)
となっています。

今から66年前の商品ってことは、祖父も中古で買った可能性もあるな。なんて思いつつ、1991年生まれの私のおよそ40年も前に作られたカメラにはとても歴史を感じました。

そもそも大衆モデルとして販売された二眼レフカメラで、現在でも「ジャンク品が2,000円程度」でリサイクルショップなどに売られているような流通数も多いカメラのようです。

リコーフレックス付属ケース
写真:残っていた純正ケース

本体と合わせてかなりボロボロのケースもありましたが、ケース付きで販売されていたことから、どうやら純正品のようです。

今にも革がちぎれそうな感じで、持ち運びに不安が残ります。

状態の程度について

リコーフレックスの状態1
写真:リコーフレックスの外面

状態はまあ見ての通り時間の経過を感じさせるものです。

傷はもう数え切れないし、軽く錆びてたりなんかもします。

リコーフレックスの状態2
写真:レンズはそこそこに綺麗

一番肝心なレンズ部分に関しては、そこそこに綺麗かなという感じです。

傷とかはなさそうですし、保存状態がひどい割には、素人目に見ても撮影できそうなコンディションな気がします。

あとは分解してみないとわかりませんね。

ちなみに修理業者に見積もりもしてもらった

キャノンFXとリコーフレックス
写真:修理見積もりをお願いした二点

ちなみにリコーフレックスの修理をする前に、都内のフィルムカメラ修理店に持ち込んで、上の二点だけ修理の見積もりを出してもらいました。

安くて、すぐに直してもらえるならそのほうが確実だなと思ったので。

ただ見積もりとしては、どちらも「2万円前後の修理費用」二点を修理したら「合計4万円以上」の修理費用がかかるという結果でした。

それに納期も数か月は要するとのことだったので、さすがに当時の定価8,000円のカメラに修理代2万円はちょっと・・・っていうことで自分で直すことにしました。

気が向いたらキャノンのほうは修理に出そうかななんて思います。(同じものを中古で購入したほうが安い説)

リコーフレックスの分解と修理

リコーフレックスを分解
写真:非常に単純な構造のリコーフレックス

というわけでさっそく分解してみました。ドライバーでガンガンばらしていくと、なんとも単純な構造で驚きました。

写真の通り部品はこれだけ。素直な感想としては“こんなんで写真撮れるってすごいな・・・”という印象です。

デジタル化に伴いどれだけ複雑な機構に変わったかが容易に想像できます。(デジタル一眼レフの中の作りとかは特に知りませんが)

ファインダーのミラーが非常に汚い
写真:ファインダー用のミラーが汚い

一番に気になった点としては、ファインダー用のミラーがものすごく汚いということ。

埃もそうですし、傷なども非常に多く、ネットで検索してみると「このミラーが汚れているとファインダーの映りが非常に暗い」とのことなので、改善するには交換が必要です。

二眼レフカメラは「見るほうのレンズと撮るほうのレンズが別」というのが一番の特徴です。

そのため極端に言えば、上のレンズは見るようなのでなくても写真は撮れる(たぶん)ということになります。

ですが、せっかくなのでスルーするわけにはいかず、

  • レンズ部分の洗浄
  • ミラーの交換

を主にやっていこうと思います。(この決断がのちに悲劇を招く)

レンズの洗浄と組み立て

カニ目レンチが必要なレンズ裏
写真:レンズの取り外しにはカニ目レンチが必要

レンズは裏のカニ目部分に器具をひっかけて回すことで取り外しが可能です。

そしてこれには「カニ目レンチ」というものが必要だと後から知りました。

ネットで検索すると「クレカで代用できる」などの貴重なご意見もありましたが、いったい何年回してないんだろうというほど固着していて、クレカの強度じゃ回せませんでした。

次にそこで発見した情報で「コンパスでカニ目レンチを自作できる」というものがありましたので、さっそくこれを実践。

カニ目レンチの素材のコンパス

まずはコンパスを二つ用意します。(コンパスを二個使用する日は二度と来ないでしょう。)

これを一度分解して組み替えます。

カニ目レンチを自作

これで完成です。

なんともチープな作りですが、そこそこの強度で、非常に悪い使い勝手ながら、レンズを取り外すことができました。

ちなみにカニ目レンチはAmazonで1,000円前後で売っています。

自作すると非常にチープなカニ目レンチが400円程度なのでどちらが良いかはお任せします。(私はすぐに開けたかったのです)

リコーフレックスのレンズを解体
写真:分解したレンズ部分

カニ目レンチとマイナスドライバーを使用することで、ここまでばらすことができました。

さらに分解できるようですが、この先はネットで調べた限り、作りが非常に精巧そうなのでここで妥協します。

レンズの部分をアルコールシートで拭き拭きして、綿棒で埃を取り除いたりしました。

正直、使用していいかはわかりませんが、途中のネジが固着している部分なんかには容赦なくこいつを吹き付けました。

カメラファンから見たら、そんなことするんじゃない!などと怒られそうですが、今回は初心者につきご容赦ください・・・

レンズカバーの極小のネジ
写真:この小さな穴にドライバーを差し込んで取り外す

レンズのカバーとなっている歯車の部分は、なにやら無理やりカシャカシャしていたら外れたのですが、本来は横の小さなネジで止まっているみたいです。見たこともないくらい小さなネジは1mm弱程度。

付けるときは回さなくてはならないので、結局精密ドライバーも購入しなくてはならないようです。(カニ目レンチもその時買えばよかったとは言わない)

ファインダーが非常に暗いためミラー交換

ミラー部分を分解
写真:ファインダーミラーも非常に簡単な作り

もう一つ重要な修理箇所であるファインダー用のミラーも非常に単純な作りです。

ミラーがもうボロボロで拭いても濁っているため、完全に新しいものに交換したいと思います。

新しいファインダー用のミラーを自作

新しいミラーを作成するための素材
写真:新しいミラーを作るための素材

とりあえず東急ハンズでミラーの素材を物色、一応店員さんにも“これと同じものを作りたいのですが・・・”とミラーを持っていって相談してみたところ

“お手持ちのミラーの厚さが1.5mmですので、アクリルだと厚くなってしまいます。素材にこだわらないのであれば塩ビなんかどうでしょうか?”

とありがたい対応をしていただきました。

そのため、以下の品を購入。

  • ハサミでもカットできるミラー(背面にシール付き)
  • 透明な塩ビ(これでも一番小さなサイズ)
  • 精密ドライバー※ちゃっかり購入

計1,300円程度でした。

厚さの問題も塩ビ1mmのミラー0.5mmで、まるで謀られたように完璧です。

今どきハサミでカットできるこんな薄いミラーがあるんですね。こうなれば作業は素人でも簡単。

塩ビを小さくカットする

まずは塩ビを小さめにカット。(この時点で残りは使わないという・・・いつか何かに・・・)

塩ビはアクリル用カッターで簡単に切り目を入れてパカっと折ることができます。

塩ビをミラーと同じサイズにカット

元のミラーがあるので、そのサイズに合わせてカットします。

一応ズレのないようにサイズとかも簡単に測っておきましたが、普通に当てて切るだけでいけました。

ミラーもカット

ミラーのほうも同じ要領でカットします。

こちらはカッターでおこないました。

ミラーも作成完了

そしたら二つを貼り合わせて出来上がりです。

所要時間およそ10分程度という手軽さ。その割にはピカピカで素晴らしいクオリティがあるのではないでしょうか。

ミラーも新しく設置完了
写真:作成したミラーを設置

サイズは厚さもぴったりなので問題なくはめ込むことができました。

これは・・・いい。

このカメラを分解・組み立てするときの注意点

ここまで終わった段階で「私は組み立て直す」という作業に入っていくのですが、最終局面で非常に難しい難題が訪れます。

それは「ピントの調節をしなければならない」ということです。

二眼レフカメラの構造は上でも少し説明したように、

上のレンズが見る用
下のレンズが撮る用 です。

そしてこの二つのピントを同期させているのが、歯車型のダイヤル部分です。

ピント調節の歯車は二つのレンズに連動
写真:歯車をかみ合わせて二つのレンズを連動させている

そのため、再度組み立て直すには、二つのレンズが同じピントになるように『自分で調節』した上で、ダイヤルを取り付けないといけません。

これがものすごく面倒です。

本当に面倒すぎるため、素人はむやみに取り外さないほうが無難です。(私は無理やり取り外してしまいました)

ありがたいことにリコーフレックスのピント調節についていろいろと記事をあげている方たちが多く、下記の記事なんかを参考になんとか調節することができました。(本当にできてるかはきわどいが)

この作業については、私も参考にさせていただいた上記の記事なんかを見ればおこなえると思いますが、非常に面倒ですのであまりおすすめしません。

実際に取り外さなくても、綺麗にできる箇所が多いので。

初めて触るフィルムカメラ

ファインダー越しの見え方
写真:二眼レフのファインダー越しの風景

実際に組み立てが完成して、ファインダーを除くと写真のように明るく映るようになりました。

元々この二眼レフは非常にファインダーが暗い作りみたいで、まだ明るいとは言えませんが、とりあえず撮影はできるかと思います。

ファインダーの映り方

ファインダーの映り方②

こんな風に映ります。

屋外や自然光が差し込んでいるところではかなり明るいですが、このように日陰になるとかなり暗めです。(実際見るともう少し明るいです)

いずれにせよ、暗い場所での撮影には不向きだと思われます。

カラーの120フィルムを購入

フィルムも購入
写真:リコーフレックス用に購入したカラーフィルム

このカメラで実際に撮影するにあたり、フィルムも初めて購入しました。

120フィルムというものらしく、カラーフィルム5本入りで4,000円とけっこうお高め。

1フィルムで12枚撮影とのことらしいので、1枚当たりおよそ70円程度と、今どきフィルムカメラなんてかなり贅沢品だなということを痛感させられます。

フィルムを実際に装着

フィルムをセット
写真:フィルムを装填してみる

こちらも利用手順について記載してある、ブログや動画などを参考にさせていただきながら装着してみました。

見た目からも想像に容易いように、かなりアナログな作りで“昔のカメラってこうだったんだなぁ~”とデジタル世代の私には新鮮でした。

フィルム装着
写真:しっかり枚数が表示されて安堵

フィルムを装着して、巻きながら本当にこれであっているのか?と不安でしたが、無事枚数を示す「1」という数字が出てきてほっとしました。

リコーフレックスは一枚撮影するごとに、自分でフィルムを巻いていかないと多重撮影になってしまいます。

かつ露出計もなく、自分で絞りとシャッタースピードを設定して撮影しなくてはなりません。当然その場で出来上がりを確認することもできません。

フィルムが高価なこともあり、一枚一枚のプレッシャーがデジタルカメラとは比にならないくらい大きいです。

リコーフレックスの使い方

シャッタースピードの調節リング

絞りはこの小さな金具で調節する

使い方は至ってシンプルで、上記したように「絞り」「シャッタースピード」を設定してシャッターを切るだけです。

ちなみにシャッタースピードは「B(バルブ)」「1/25」「1/50」「1/100」のみでバルブ撮影(※シャッターを開きっぱなしにする撮影法)を除くと実質3つしか選べません。これもデジタルでは考えられませんね・・・

シャッターボタンも小さい金具だけで、ボタンなどはありません。

シャッターが壊れていると修理が面倒みたいでしたが、シャッター機能は全く壊れていなかったのが幸いでした。

現像はカメラのキタムラでおよそ10日間かかる

このカメラで近所の風景などを撮影してみて、撮れているかわかりませんが、現像してもらうために「カメラのキタムラ」に持っていきました。

料金はフィルム1本648円で、このフィルムの場合は工場に送っての作業になるため10日程度かかるといわれました。(※一応即日で現像してくれるカメラ屋さんもあるにはあるようです)

撮影してから10日間も写真の出来を確認できないなんて・・・と思いましたが、当時はみんなそうしていたんでしょうね。

デジタルの文化に慣れてしまうと不便に感じてしまいますが、その分一枚一枚の撮影には自然と力が入ってしまうという意味ではプラスにとらえたいと思いました。

現像した写真について

出来上がったフィルムのネガ
写真:120フィルムのネガ

予定より早く6日程度でできあがりました。

現像して手元に来たのがこれ・・・え・・・これだけ??

今まで「現像=ネガだけ」「現像+プリント=ネガと写真にする」ということを正直知りませんでした。

現像のみを頼んだ形になってしまっていて、ネガしか受け取れませんでした。

フィルムカメラを普段から使っている人は最初に現像だけして、ネガを確認してからプリントする方なんかもけっこういるみたいです。

己の無知を呪っても仕方がないので、もう一度お店に行って、せっかくなのでネガをデータ化してもらいました。

なので、ここからさらに数日後初めて写真の出来を確認することができました・・・焦らしが・・・

できあがった写真を紹介

やっと、やっと、ちゃんと確認することができた写真が以下です。(※編集も一切せずスキャンデータのままアップしています)

二眼レフで撮影した風景①

二眼レフで撮影した風景②

二眼レフで撮影した風景③

二眼レフで撮影した風景④

まず初めに思ったのが単純に“撮れててよかった~”ということ。

厳選した(?)4枚を載せましたが、ピントのズレなどはあっても、まず映っていてくれたことに感激しました。

絞りやシャッタースピードの設定も、普段からデジタル一眼レフでもマニュアル設定で撮影していることもあってか案外できてて自分でも驚きました。まったく自信なかったので・・・

写真としてちゃんと撮れていたのは12枚中6枚で、他は手ブレしていたり、フィルム回さず二回撮影してしまったりで、もったいないですが初めてで思ったより打率は高かったです。

4枚目はフィルム回さず多重露出になっていたのか、若干心霊写真っぽくなっていましたが、これはこれでいいだろうということで上げました。

写真の出来に関しては、ただお試しで撮影した見慣れた近所の景色にも関わらず、昭和の時代のような空気感があって不思議な感じがします。

何も編集していないのに「レトロなフィルター」がかかったような写真が撮れることが、こうした古いカメラで撮影する一番の魅力だなと感じました。

デジカメと二眼レフの比較

同じ日に同じ場所でデジカメ(SONY RX100M4)で撮影した写真も、比較ついでに上げておきます。

見てるとタイムスリップしているような気分になりますね。

RICOHFLEXで撮った写真

SONY RX100M4

二眼レフの写真は若干ピントずれしているので、その分はありますが、それでも色味の違いやシャープさの違いはわかるかと思います。

個人的には「影」の捉え方がまったく異なっているように感じました。

SONYのRX100もとても性能が良いデジカメで、これはこれで綺麗な写真であることに間違いありませんが、あえて上の古い写真が良いと感じる人も多いのではないかと思います。

まとめと感想

長くなりましたが、いや、実際にカメラを直し始めて写真を見るまでは本当に長かったです。

ですが、祖父が当時使っていたカメラ越しの景色を見れたこと、そのカメラで撮った写真をこの目で見れたことはとても良い体験になったと思います。

たしかに現代のカメラと比較すると、とんでもなく不便です。最低限の知識がなければ撮影の設定すら難しいですし、やり直しも利きません。撮影するだけでフィルム代もかかります。

ですが、このカメラは電池も必要としませんから、フィルムさえあればどんな場面でも写真に収めることができます。(これが機能的な唯一のメリットかなと・・・)

今は誰もがスマホで簡単に写真が撮れますし、デジカメや一眼レフなどもそうです。わざわざ一枚一枚にお金をかけてまで写真を撮ろうという人はほとんどいないと思います。

しかしいろいろな意味で手軽に撮れない大事な一枚だからこそ、思い入れの残る写真が撮れるような気もします。

趣味とか好きなことって、案外こんな風に便利さの対極にあるのかもしれません。

先にも言ったように手に入れようと思えば数千円で中古品を購入できるカメラですし、機械いじりが好きな方は楽しめるのではないかと思います。