買取業界にまつわるお金の闇

買取店を利用する方の中では「他店と比較して一番高いところで売りたい」と考えている人も多いと思います。

実際に比較してみると、同じ品物でも場合によってはかなり大きな金額差が生まれることもあります。

なぜそのようなことが起こるのか?

そこは買取業者としてはあまり触れられたくない、買取した品物の販売先が大きく関わっています。

買取後の品物のおおまかな流れについて

買取店による金額の差を知る上で、まずはじめに買取というシステムの具体的な流れを知る必要があります。

しかし誰にでも想像が付くように、システムとしては至って単純です。

「仕入れ(買取)をして再び売る」これだけです。その差額で儲けるといった意味では、いわゆる「転売」と同じといっても良いでしょう。

仕入れについては想像に容易いように、店頭買取であったり宅配買取であったり、売りたいお客さんから品物を買い取るということがメインです。

しかし買取した品物がどこに流れているのか。ということは意外に知られていないところです。

買い取った品物は卸売りなのか小売りなのかで分かれる

買取流れチャート図

買い取った品物は基本的に二つの捌き方に分かれます。

  • 小売り:店頭やネット販売など
  • 卸売り:業者間の市場やオークションなど

まず一つは店頭などで普通に販売すること、もう一つが業者向けに卸売りされることです。

そしてどちらを念頭に置いて品物を買取したかどうかで、買取価格の上限も大きく変わってきます。

もちろんより高く売れるのは小売販売ですので、小売りで確実に捌けると見込める品物に関しては、より高値を付けても買取店は利益を確保することができます。

そのため販売力が高いお店(大手の買取店や、店舗が多いお店など)ほど、より高値を付けることができる点は、どの買取ジャンルでも共通の事実です。

卸売りと小売りの相場の違い

卸売りなどで利用される「業者間オークション」などは基本的に古物商の届け出がないと利用することができません。

一言で卸売りと表現していますが、落札する側はあくまで仕入れとして入札しています。

買取は得意でないけど、販売は得意といった中古店はこうした卸売市場から品物を仕入れて販売しているお店も多いです。

そのため卸売りの相場は安く、当然小売販売とは差額があります。

例えばブランド品なんかだと、卸売りと小売販売価格の相場は以下のような差額があります。

ルイヴィトンのバッグなどの例(新品定価が15万円程度の品)

  • 中古品の小売販売の価格相場:8万円-10万円程度
  • 業者間の卸売りの価格相場:5万円-7万円

もちろん人気などによって相場は大きく異なってきますが、このくらいの価格帯のブランド品バッグであれば、小売販売価格と卸売りの相場で最大5万円程度、相場がかけ離れていることが多いです。

ブランド品などの場合は一点一点が高額なため、割合で言うとそこまで大きな差額になりませんが、本など安めの品であれば卸売価格は小売販売相場の3分の1以下という場合もあり得ます。

販売力のない宅配買取業者などは卸売りがメイン

基本的に小さめの買取店や、買取専門店などは卸売りをメインにしています。

多くのネットだけの宅配専門店などは、自分で商品を売らずにすべてオークションなどに流して利益を確保するといった流れが主です。

ただ大きめの買取店でもどうしても店頭で売れ残ってしまう商品もありますから、そういった品物の最終的な受け口も卸売り市場です。

卸売り先となる市場やオークションは、基本的に品物のジャンル別に「古物・骨董品オークション」「ブランド品・貴金属オークション」「古本・メディアオークション」などのように分かれています。

主催者などの第三者が介入する場合もあり、相場などはかなり適切に保たれているため、価値のないガラクタでない限りはほぼ確実に捌くことができます。

高値を付けてくれるお店と利益の関連性

大手と小型の買取店のメリットとデメリット

買取した金額と売った金額の差額が利益になるというのは実に単純な仕組みです。

そのため簡単に言ってしまえば「少しでも利益を削って買取しているお店」か「販売力が強く小売りで高値を付けても捌けるお店」、どちらも兼ね備えているお店が、売る側としてはもっとも高値になりやすいといえます。

ただこれを兼ね備えている買取店は現状限りなくないといえます。

なぜなら、

  • 大手の業者(=買取力、販売力ともに強い):利益率の最低ラインを高く引いている、最低でも30%は利益乗せれる価格が買取上限など。
  • 小さな業者(=買取力、販売力ともに弱い):利益を削ってでも買取してくれるが、販売力がないためそもそも上限が低い。

このように大手は大手で店舗などの維持コストが高いため、利益率に重きを置いた展開をしていて、小型店は利益は削ってくれるが卸売りがメイン。となるところが多いからです。

特に近年新しく登場している買取サービスは、小売販売よりもリスクの低い卸売りメインのお店が多いため、結果的に業界内でお金が回っているだけで市場全体としては縮小していっている傾向があります。

品物の相場と上限価格について

買取した品物が小売りで捌くのか、卸売りで捌くのかで販売価格が大きく異なり、買取店の利益が異なるということは分かったと思います。

しかし現状では「卸売り相場を基準に買取価格が設定されている」面が非常に大きいです。

もっと言ってしまうと「リスクがある金額で買取してくれるお店はほぼない」ということです。

卸売りしない専門分野に特化した買取店は強い

唯一強みがある買取店は「専門分野に特化していて、マニアの顧客が多いようなお店」です。

こうしたやり方で店舗数も大きく増やすというところまでできているお店は限りなく少ないと思います。

より広く展開しようとすると、従業員の知識も追いついてきませんし、維持コストなど余計な経費が増えるため、どうしても専門的なお店は小型店ばかりになる傾向があります。

ですがこうしたお店はマニアが集まる分、買取する品物の質も高く、かつマニアックな顧客層を抱えている分販売力も強いという好循環が生まれています。

より高く売りたいということであれば、総合リサイクルのような幅広いジャンルを取り扱いしているお店より、専門に特化したお店のほうが高いというのはどのジャンルでも鉄則の一つです。

とはいえ基本的に小型店は安い

しかし買取価格というのは所詮相場に対して、利益をどれくらい乗せるのかといったさじ加減です。

上のような販売力に長けた専門店など、国内に数えるほどしかありませんし、実際は卸売りで利益を得ているお店がほとんどです。

買取においては、卸売り相場以下の値段で買取している限りは損することは絶対にないため、そんな強気で買取してくれるお店などほぼないというのが実情です。

いまだに価格交渉ができる市場というのが問題

買取業界はいまだに「価格交渉」が積極的に行われている市場です。

基本的に交渉ができないといわれている宅配買取などの分野でも、一度メールなどで提示された額から交渉して引き上げられるというケースも増えています。

言ってしまえば、どこの買取店も「買取額の高さで比較してほしくはなく、できるだけ安く買取したい」のです。

しかし品物を確保しなければ利益も生まれないため、こうした金額交渉が売り手側と盛んにおこなわれます。

品物には適切な相場がある

どんな品物でも、市場価格に対した適切な買取価格が存在すると思っています。

買取は買いたい人と売りたい人を繋げる仲介役ですので、いかにどちらも納得できる適切な価格を提示できるかが全てのはずです。

にも拘わらずいまだに交渉によって値段が大幅に上がる、情弱狩りのようなことが行われていることは疑問に思います。

当然、買取店は自分たちが少しでも多く利益を得るためには安く買取しなくてはなりません。もしくは高く売るかのどちらかです。

このバランスがどうしても「安く買取する方向」に傾いているように感じるのが、今の買取業界の現状です。

CtoC市場に飲み込まれる前にすべきこと

買取業界はメルカリをはじめとするCtoC市場に飲み込まれつつあります。

それは単純に便利なことに加え、買取価格を安く設定しすぎている点にあると考えています。

買取市場ではなぜか査定比較のサービスが育ちません。あらゆるジャンルで使われている一括査定見積もりなどもほぼありません。

実際にいくつか存在しますが、大手の業者が積極的に参加しているものは皆無です。

これも「金額を比較してほしくない、できるだけ安く買取したい」ということがうかがえます。

今すぐ利益を削って高く買取しろと言いたいわけではありませんが、もう少し高値を付けられるシステムを整えないと業界そのもの需要が消滅してしまうのではないかと危惧しています。

まとめ

当サイトは少しでも品物を売る方が、高く売れるように役立つ知識を紹介できるよう、高額品に関しては査定の比較なども積極的におこない記事にしています。

実際に比較すると、思わぬ金額の差が生まれていることがほとんどで、名のある大手の業者なのに他社と比較するとびっくりするほど安いことも多いです。

ですがそうやって比較されていく中で、業界全体が育っていかないと新しい波に飲まれてしまうことは避けられないと、実際に買取している立場から感じています。

単純に外国人観光客をターゲットにしたアウトバウンド戦略だけでは、どうしようもないところまで来ています。

私自身、取材も兼ねて、様々な買取店で査定しに回ることが多いです。

その中でもっともよく言われることが、
“何社目ですか?最後に来てほしかったです。”

より良いサービスとはなんなのか、今一度業界全体で考えていかなければならないのではないでしょうか。